皆さんは「行動経済学」について説明できますか?
私も「行動経済学」という言葉は聞いたことはあるものの、詳しいことはわかりませんでした。
人は何故、行列に並びたがるのか。
安い宝石店では客が来なかったのに、高くすることで客も収益も上がったのは何故か。
理屈ではありえないような事も、人の心理的な行動を読み解けばビジネスにつながるんだなと実感させてくれるものです。
お客さんを相手にする販売や飲食業を営むかたであれば、是非とも熟知しておきたいものばかりです。
今回は例を用意しつつ、行動経済学がどのように使われているのかを学んでいきましょう!
Contents
1.商品を買うメリットと買わないデメリットを一度に説明する
例えばあなたが平均体重をはるかに上回る巨体だとします。
そこへ商人が現れ、こう言いました。
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="marco_polo.png" name="商人"] この腹筋ローラーを使えば30日で痩せるよ!引き締まった身体が手に入れば自分に自信がつくよ![/speech_bubble]
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="marco_polo.png" name="商人"] それに使わないと折角の若いうちに痩せて引き締まった身体じゃないのは勿体ないよ![/speech_bubble]
とWパンチ。
よくある売り手文句ですね。
つまり使えば痩せて良いこともあるし、使わなければ痩せずに悪いことばかりという言い分です。
流されやすいかたはこの時点で商品を購入しますよね。
しかし、それでも消費者としては値段が気になります。
安くしてくれないかと言います。
そして次に商人はこんな手にでました。
2. 返金保証をつける
よく商品には「〇日間なら返金保証!」と謳っている商品が多いですね。
通販でもクーリングオフ制度があるので、これは当たり前と言っても過言ではありませんが。
「お試し期間」もこれに該当します。
さて、実際に返品されて返金されては売り手側としては元も子もないように思えます。
では何故、この返金保証をつける会社が多いのか?
それは行動経済学の一つに「保有効果」と呼ばれる心理的な行動があるからです。
人は一度手に入れたものを手放したがりません。
例え使わなくても、自分の管理下にあることを喜びにしているのです。
コレクターが良い例ですね。
また、返品する手間も面倒なかたが多いです。
そして返品する手続きも面倒なことが多いです。
買うのは簡単、でも返すのは面倒となれば10人いて1人が返品したとしても商人としてはやっていけるわけですね。
それでも痩せることや引き締まった肉体美を求めていないかただったら?
次に商人はこんな手にでました。
3.他の購入客の体験談など、第三者情報を流す
他の購入客のリアルな体験談を知り、本当に痩せることや引き締まった身体を手にすることが可能なんだと自覚させる方法です。
よく見かける手法ですが、私はいつも胡散臭いな~と思っています(笑)
この人は会社側の人間なんじゃないのか。「サクラ」なんじゃないのか、と!
今までとは異なる商品の推し方になるため、ここを突かれると弱い人も多いです。
これだけ多くの人が選択したものを自分は買わなくていいのか、と集団心理的にもなります。
そして商人はこう言います。
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="marco_polo.png" name="商人"] 今セールス中なので、ここで買わないとチャンスは二度とないかもしれませんよ![/speech_bubble]
4.アンカリング効果
アンカリング効果も行動経済学の一つです。
最初に高い値段を提示したあと、安い値段を提示することで消費者の購買判断を鈍らせるものです。
「数量限定」や「売り切れ次第終了」もこの手法ですね。
商人はこう言いました。
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="marco_polo.png" name="商人"] 今この腹筋ローラーはセール中でして、9980円のところ6980円で売っているんです。[/speech_bubble]
ほぼ半額……と思いきや実際は3000円の差ですね。
それでも安いことには変わりませんが、ここにも「大台割れの価格」と呼ばれる行動経済学が使われています。
人は桁数が大きくなると緩かった財布もきつくなります(笑)
スーパーで特にセールをしているわけでもないのに安く感じてしまうのは、この効果がうまく働いているからですね。
少し話がそれましたが、価格設定は消費者が買いやすいようにうまく設定されています。
さて、商品にも興味を示し、値段も安いとなれば消費者は既に商人の手の内に来たも同然です。
次は商人が強気に出る番です。
5.松竹梅の法則
さて、商人は先ほど6980円で腹筋ローラーを売るという話でした。
消費者が買う気になっていた時に商人から出た驚きの発言、それは……。
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="marco_polo.png" name="商人"] 実はこの腹筋ローラーはエントリーモデルで、他に9800円のベーシックモデルと14800円のマスターモデルがあるんですよ。[/speech_bubble]
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="marco_polo.png" name="商人"] こちらもセールでこの価格で、本来はこの2倍近くするんですよね~。どうします?[/speech_bubble]
さて、腹筋ローラーは1種類ではなく3種類あるという事実をここで知ります。
今まで紹介されていた6980円の腹筋ローラーはエントリーモデル……体験者が購入したのは1つ上位のベーシックモデルと知ります。
ここで行動経済学の一つ「松竹梅の法則」が働くわけです。
人は3種類の物があった時、真ん中を選びたがります。
一番安いのは嫌、かといって高い買い物もしたくない(価格にもよりますが)
そうなると真ん中を選びがちです。
よく和食レストランでもありませんか?
松定食 10000円
竹定食 4500円
梅定食 1500円
例えばデート相手と普通にご飯を食べにいったとします。
記念日なら松定食でも良いと思いますが、何でもない日であれば安く抑えたいですよね。
でも一番安い定食を選ぶのにも気が引けてしまう……そんな心理から真ん中の竹定食を選ぶのではないでしょうか。
商人は消費者に選ばせているようで、最初からベーシックモデルを9800円で売るつもり満々だったのですね。
消費者は悩んだあげく、この9800円のベーシックモデルを購入しました。
そして最後に商人がトドメをさします。
6.ピークエンドの法則
人は何かをやり取りしているとき、絶頂期と最後がどうだったか、という印象だけが強く残ります。
むしろ他の過程は殆ど記憶に残らないのですね。
商人からベーシックモデルの腹筋ローラーを購入する消費者。
すると商人から思いがけないサービスを受けます。
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="marco_polo.png" name="商人"] 実はベーシックモデルの在庫切らしてしまって、上位のマスターモデルを同価格で提供しますよ![/speech_bubble]
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="marco_polo.png" name="商人"] これ本部にバレるとまずいので内緒でお願いしますね![/speech_bubble]
と言われ、何と消費者は本来14800円するはずのマスターモデルを9800円で入手してしまいます。
これには思わず大喜びの消費者。
行動経済学の一つ「ピークエンドの法則」に則って言えば、ここが絶頂&最後でしょう。
こうして商人は数多く在庫を抱える腹筋ローラーをまた一つ売ることに成功しました。
本部には内緒、などといった発言も消費者の心を動かすための手でしょう。
さて、終わりかと思いきやまだもう一押しあります(笑)
7.テンション・リダクション効果
テンション・リダクション効果とは、緊張状態から緊張が解れる瞬間を表したものです。
大きな契約のあとは緊張の糸がほぐれた状態ですね。
財布の紐もゆるんでいる状態です。
さて、ベテランの商人はここぞとばかりに攻め込みます。
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="marco_polo.png" name="商人"] 今回、腹筋ローラーを購入してくれたかた限定で売っている商品があるんですよ![/speech_bubble]
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="marco_polo.png" name="商人"] この、ほぐしバーを使えばより効果が期待されますよ~。こちらは1280円です。[/speech_bubble]
と、先ほどの腹筋ローラーから比べると相当安い価格のものが提示されました。
思わず消費者は「それもください。」と言ってしまうのです。
商人の手口から学ぶものは多い
いかがでしたでしょうか。
たった一つの商品を販売するまでに、いくつもの手法や効果が使われていました。
文章で書くと「私なら騙されない!」と高を括りがちです。(別に詐欺ではないんですけどね)
実際の手口はもっとうまく消費者を誘導します。
他にも医療関係だと手術で「死亡率20%」と伝えるよりも「成功率80%」と伝えたほうが安心感が出ますよね。
同じパーセンテージでも言い方次第で捉え方は変わるのです。
他にも行動経済学の面白い効果として「バーナム効果」というものがあります。
これは誰にでもあてはまるものだけど、自分に向けられることで信頼関係が築けるというものです。
占い師がよく使うもので、相反する言葉を同時に発することで納得してしまうというもの(笑)
例えば、
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="job_uranaishi.png" name="占い師"] あなたは保守的にみえるけど、内面的には積極的ですね。[/speech_bubble]
[speech_bubble type="drop" subtype="L1" icon="job_uranaishi.png" name="占い師"] いつも元気だけど落ち込むこともあるのですね。[/speech_bubble]
とても当たり前なことを真剣に話してくるわけです。
当事者はつい、この人はすごいな~と信じてしまうものです。
まとめ
面白いことに行動経済学を少し学んだだけで消費者をどう捉えようとしているのかが理解できます。
消費者目線としては、本当に買う必要があるのか、安いもので代用できないのかを意識して気を付けていきたいですね。
商人側のかたは如何に商品を魅力的にアプローチできるかが鍵になってくると思います。
行動経済学では「人は論理ではなく感情で動いている。」という名言があります。
ほかにも行動経済学の教えは沢山ありますので、興味を持たれたかたは是非調べてみてくださいね!